終活とは?やることチェックリストや始めるべきタイミングを解説
公開日:2023/09/26
更新日:2023/09/26
「終活」とは、人生の最期を自分らしく迎えるための準備です。また、終活には残された家族や身の回りの人への負担を軽減する役割もあります。
この記事では、終活の重要性や具体的な「やることリスト」について詳しく解説します。終活を始めるタイミングや終活ノートの作成方法についても解説していますので、ぜひ参考にしてください。
1.終活とは?
終活とは「自分の人生の最期に備える準備」のことです。つまり、いつか訪れるお別れのときや、亡くなる前後のことを考えて、ご自身の財産や身の回りの整理をすることを指します。
終活という言葉が一般的に使用されるようになったのは、2010年ごろといわれています。
少子化・核家族化が進む日本では、老後の介護や死別後の手続きなど、残された家族への負担はますます大きくなっています。また、平均寿命も年々伸びており、高齢者となってからも長い年月を過ごすことが考えられるのです。
そこで注目されるようになったのが「終活」です。
終活の主な内容は、財産や身の回りの整理ですが、それに加えて、悔いのない人生を全うするための思い出づくりや、自分らしい最期を迎えるための終末期の過ごし方を考えることも含まれます。
また、終活を行うことで、自然と家族とのコミュニケーションも増えます。家族とともに大切な思い出を振り返りながら、未来について話し合うことは、残りの人生を前向きに過ごすための活動にもなるのです。
2.終活のメリット
終活というと、人生の終わりを意識するため、一見するとネガティブな印象を持つ人もいるかもしれません。しかし、終活には、ご自身と家族にとってさまざまなメリットがあるのです。
メリット①ご自身や家族の気持ちの整理ができる
終活は、これまでのご自身の人生を振り返ることから始まります。この振り返りのなかで、過去のうれしかったことや悲しかったこと、家族との思い出など、さまざまな人生の記憶を思い出すことでしょう。
これまでの人生を振り返ると、ご自身が大切にしてきたこと、そしてこの先の人生でも大切にしていきたいことが明確になるはずです。終活は、事務的な作業ではなく、こうしたご自身と家族の気持ちを前向きに整理するための活動ともいえます。
メリット②老後の不安を解消し、自分らしい人生を過ごせる
年齢を重ねて、いわゆる「高齢者」と呼ばれる時期に差しかかると、老後の生活について不安を抱える人も少なくないでしょう。介護が必要になった際の生活や老後の資金計画などが漠然としたままでは、日々の生活も不安になってしまいます。
終活を行うことで、現在の財産の棚卸ができ、老後の資金計画も立てやすくなります。また、老後の過ごし方について、家族と事前に話し合っておけば、介護が必要になったときもスムーズに対応できるでしょう。
メリット③相続によるトラブルを避けられる
故人が亡くなったあとに生じるトラブルは、主に遺産相続にかかわる金銭トラブルです。こうした遺産相続トラブルは、遺産の額にかかわらず発生します。故人との関係の深さなど、残された遺族の心理的な要素もかかわってくるためです。
終活の際に、財産リストを作成し、財産を誰にどのように相続させるのかを明確にしておけば、こうした遺族同士のトラブルを防ぐこともできるでしょう。遺族も「故人の遺志」が明確に残されていることによって、冷静に相続問題と向き合うことができます。
メリット④残された家族の負担を軽減できる
故人との別れのあと、残された遺族は悲しみを抱えながら、さまざまな手続きに追われることになります。故人の友人や仕事関係の人への連絡、葬儀の手配、年金や健康保険などの公的手続き、相続の手続きなど、その内容は多岐にわたります。
もし、故人が知人の連絡先を整理して残していなかった場合、残された家族は、こうした連絡先を調べる作業から始めることになります。また、財産についても不明瞭なままでは、相続手続きにも多大な労力がかかります。
終活の際に、必要事項を記録しておけば、残された家族の負担も大きく軽減するでしょう。
3.終活を始めるタイミング
ご自身と家族にとって、メリットの大きい終活ですが「いつから終活を始めればいいの?」と悩んでしまう人も多いでしょう。
実は、終活を始めるタイミングに決まりはありません。適したタイミングも、人それぞれに異なります。そこでここでは、終活を始めるタイミングの基本的な考え方を紹介します。
年齢に応じたタイミング
終活は、何歳から始めてもよいものですが、一般的には「60〜65歳前後」にスタートする人が多いとされています。
この時期は、人生の節目である「還暦(60歳)」を迎えるタイミングでもあります。また、サラリーマンであれば、65歳で定年退職をして、第二の人生に目を向けるタイミングともいえるでしょう。
60代後半や70代に入ってからでも、終活は遅くありません。年齢とともに健康状態や家族構成、財産状況なども変わるため、その都度、終活の内容を見直すことが大切です。
状況に合わせて始める
終活を始めるタイミングは、年齢だけではなく個人の状況にも左右されます。
例えば、健康状態や家族構成の変化、大きな病気や事故といった急なライフイベントがあった場合も、終活を始めるタイミングといえるでしょう。「今のうちに、終活を始めておこう」と意識したときが、始めるべきタイミングともいえるのです。
終活は早めに取り組むのがおすすめ
終活を始める年齢的なタイミングは、60〜65歳前後が一般的ですが、年齢にかかわらず早めに取り組むことをおすすめします。
早めに終活を始めておけば、万が一急な事態に見舞われても、慌てずに自分の希望を実現しやすくなるからです。また、ご自身が心身ともに元気であるうちに終活をスタートすることで、家族にも負担をかけずに、スムーズに進めることができます。
終活は、豊かな人生を全うするために欠かせないステップです。「そろそろ終活を始めようかな」と思い立った日から、少しずつ着手していきましょう。
4.終活やることリスト
「終活の重要性は理解できたけれど、何から始めればいいのかわからない」と戸惑う人も多いでしょう。そこで、ここでは「終活やることリスト」をまとめました。
● 財産リストの作成
● 遺言書の作成
● 老後資金の計画
● 知人・関係者リストの作成
● 身の回りの整理・断捨離
● デジタルデータの整理
● 治療・介護に関する意思表示
● 葬儀・お墓に関する意思表示
● やりたいことリストの作成
それぞれの項目について、詳しく見ていきましょう。
財産リストの作成
まずは、ご自身の財産をまとめた「財産リスト」をつくりましょう。財産リストとは「どういった財産が」「どのくらい」「どこにあるのか」をまとめます。財産リストの項目事例は、以下のとおりです。
プラスの財産 | マイナスの財産 |
---|---|
● 預貯金 ● 有価証券(株式、債券、小切手など) ● 生命保険 ● 公的年金 ● 不動産 ● 貴金属 ● 美術品・骨董品 など |
● 借入金(ローン残債など) ● 未払金 など |
財産を整理する際は、預貯金や不動産、有価証券などのいわゆる「プラスの財産」をまとめておくのはもちろんですが、借入金や未払金などの「マイナスの財産」も明らかにしておきます。また、クレジットカードを複数枚持っている方は、使用していないクレジットカードを解約して、整理しておくといいでしょう。
遺言書の作成
相続のトラブルを避けるためには、遺言書の作成が有効です。遺言書では、作成した財産リストに応じて、それぞれの財産を誰に相続させるかを示すことができます。
遺言書の主な目的は、相続先の明示にありますが、それ以外にも残された家族や遺族への感謝の思いなどを書き残すことも可能です。
老後資金の計画
ご自身の貯蓄や年金の状況を把握します。月々の出費に対して、貯蓄や年金などでどういった生活ができるか、具体的にイメージしておくことが大切です。
また、保険については、契約状況を確認し、必要に応じて契約内容を見直します。保険の見直しは支出の削減にもつながるため、定期的に行いましょう。
知人・関係者リストの作成
ご自身の知人・関係者の連絡先リストを作成しておけば、亡くなったあとでも遺族が連絡を取りやすくなります。
また、急な出来事でこの世を去ることになった場合、大切な人に何も伝えられないまま、別れなければならないかもしれません。終活で知人・関係者のリストを作成しておけば、元気なうちに連絡を取るきっかけにもなるでしょう。
身の回りの整理・断捨離
ご自身が元気なうちに、身の回りの整理を行いましょう。亡くなったあとは、遺族が故人の住まいの片づけを行いますが、その際に身の回りの品が大量に残っていると、大きな負担をかけてしまいます。また、故人にとっては大切なものであっても、遺族がそれに気づかず捨ててしまう、といったこともあるでしょう。
終活として、少しずつ身の回りの物を整理・処分しておき、大切なものは残してもらえるように家族に伝えます。また、この機会に「断捨離」を行えば、住まいがすっきりして人生の後半を過ごしやすくなるでしょう。
デジタルデータの整理
デジタルデータとは、スマートフォンやパソコンに保存されている写真や画像、メール、書類などのデータのことです。ほかにも、webサービスのIDやパスワード、SNSのアカウント情報なども、デジタルデータに該当します。
ご自身が亡くなったあとの手続きで、webサービスのIDやパスワード、SNSのアカウント情報が必要になる場合もあります。残されたご家族がスムーズに手続きできるように、必要な情報はリストにして残しておきましょう。
また、デジタルデータのなかには、削除せずに残しておいてほしいもの、人に見られたくないもの、などさまざまな情報があります。ご自身が亡くなったあとに、これらのデジタルデータをどう扱ってほしいかも、書き残しておくことをおすすめします。
治療・介護に関する意思表示
終活は「人生の最期を自分らしく迎えるための準備」です。そのため、終活では、人生の最期に大きくかかわるご自身の治療や介護に関する希望事項も明確にしておきましょう。
例えば、大きな病気やケガに見舞われ、ご自身では意思表示ができなくなってしまった場合に備えて、どういった治療や介護サービスを受けたいか、延命治療を希望するかどうか、などを具体的にしておきます。
近年では、死期を伸ばすだけの延命治療を自ら断り、自然な死を受け入れる「尊厳死」という考え方も広まりつつあります。また「長年暮らした自宅で、家族とともに最期を迎えたい」といった、自宅での看取りを希望する人もいます。
ただし、治療や介護に関しては、ご自身の気持ちはもちろんですが、ご家族の気持ちや希望をないがしろにしてはいけません。終活のなかで、家族とも話し合い、どういった治療や介護サービスを望んでいるのか、双方の思いをすり合わせましょう。
葬儀・お墓に関する意思表示
残された遺族は、故人との別れの直後に、葬儀の手配などで忙しくなります。精神的にもつらい時期であるため、葬儀のことを考えるのも苦しいかもしれません。そういったときでも、故人が残した意思表示があれば、残された家族の大きな助けとなるはずです。
具体的には、希望する葬儀のスタイルや予算、遺影に使用してほしい写真、喪主を誰に努めてほしいか、などを指定しておくといいでしょう。
また、お墓についての意思表示も重要です。埋葬方法や埋葬場所の希望、すでにお墓の用意があれば、その連絡先を記します。また檀家になっているお寺がある場合は、連絡先やお布施の目安なども具体的に書き残しておきましょう。
やりたいことリストの作成
終活は、ご自身が亡くなったあとのためだけの活動ではありません。「残りの人生をどう生きるか」を考えることこそが、終活の本質ともいえます。とくに、定年退職をして第二の人生を歩むタイミングの方や、健康状態に変化があった方などは、終活で「やりたいことリスト」を作成すると、人生の新たな目標が見つかることもあるでしょう。
やりたいことリストを作成するときは、あまり難しく考える必要はありません。自分が興味をもっていること、長年チャレンジしてみたいと思っていたこと、行ってみたい場所、会いたい人などを書き出してみましょう。
5.終活ノートの重要性
終活の内容は多岐にわたり、記録するべき事項も多くあります。終活をスムーズに進めて、必要事項を漏れなく書き残すためには「終活ノート(エンディングノート)」の作成が非常に重要です。
終活ノート(エンディングノート)とは
終活ノートとは、終活で必要な情報を書き記したノートのことで、エンディングノートとも呼ばれています。特定の書式はありませんが、ご自身がわかりやすい形で、終活に関する情報を書き記します。
最近では、終活専用のノートも販売されています。終活専用ノートでは、記録を残すべき事柄について、あらかじめ書式が用意されています。「何を記録したらいいのかわからない」という方でも、手軽に終活ノートを作成しやすいので、こうした専用ノートを活用するのもおすすめの方法です。
また、終活ノートという名前ですが、ノートに手書きで書くだけではなく、パソコンで作成することもできます。法的な書類ではないため、書式にこだわらず、ご自身が記録をつけやすい方法を選びましょう。
終活ノートの記録事項
終活ノートには、基本的に終活で整理した情報を、余さず記録しておきます。具体的には、以下の項目を記録しておくといいでしょう。
● 自分の個人情報(住所、氏名、生年月日、本籍など)
● 身分証明書の保管場所
● 財産リスト
● 遺言書の有無、保管場所
● 知人・関係者の連絡先リスト
● かかりつけ医の連絡先
● 身の回りの品の取り扱い、処分方法
● デジタルデータの取り扱い、処分方法
● webサービスのID、パスワード
● SNSアカウント情報
● 治療・介護に関する意思表示(希望する治療・介護内容、希望する医療機関・介護サービス、延命治療についての考え方など)
● 葬儀・お墓に関する意思表示(希望する葬儀のスタイル、予算、遺影に使用してほしい写真、喪主の希望、埋葬場所・埋葬法の希望など)
● やりたいことリスト
● 家族や知人へのメッセージ
1度記録した情報でも、変更があれば何度でも書き直せるのが終活ノートです。気負わず、今の状況や気持ちに合わせて、書き記していきましょう。
6.お墓の準備と管理
お墓の準備と管理は、終活のなかでも重要なポイントです。一般的に、お墓は先祖代々引き継がれていくものですが、お墓の継承者ではない人の場合、ご自身でお墓を準備する必要があります。
お墓の準備では、まずは墓所を決めることから始めます。希望の墓所が決まったら、墓石を決めてお墓を建てます。新しく建てたお墓は、宗教ごとに定められた儀式を行い、その後、故人の納骨を行います。
お墓の準備は、地域や宗教によっても、細かな手順や儀式が異なります。お墓の準備が必要な人は、終活として、事前に埋葬場所や埋葬方法と合わせて、お墓選びも検討しておきましょう。
お墓の準備と管理については、下記コンテンツで詳しく解説しています。
7.終活をサポートする専門家
終活の内容は、非常に多岐にわたります。特に、財産の整理や相続の準備に関しては、専門知識が必要になる場合も少なくありません。終活をスムーズに進めるためには、専門家にサポートしてもらうのも有効な手段です。
終活のサポートをしてくれる専門家には「弁護士」「税理士」「ファイナンシャルプランナー」などがあげられます。ほかにも、終活アドバイザーや終活カウンセラーといった終活に特化した専門家もいます。
それぞれの役割の違いについて、解説します。
●弁護士
終活において、弁護士に相談できる内容は「遺言書の作成」「遺産分割」「相続手続き」「相続争い」など、主に法的な手続きを伴うものがあげられます。財産や相続で、何かトラブルの不安がある場合は、弁護士に相談しましょう。
●税理士
終活において、税理士に相談できる内容は「税務書類の作成」「相続税対策」「相続税の申告」など、主に税金にかかわる内容です。また「遺言書の作成」も税理士に相談可能です。相続によって納税が発生する場合は、税理士に相談しましょう。
●ファイナンシャルプランナー
終活において、ファイナンシャルプランナーに相談できる内容は「老後資金の計画」「財産の棚卸」などです。ファイナンシャルプランナーは、お金のプロであり、お金にかかわる幅広い知識を有しています。
しかし、ファイナンシャルプランナーは、個別具体的なアドバイスはできません。終活を始める前に「お金の基礎知識を知りたい」といった場合の相談窓口として適しています。
終活アドバイザー・カウンセラー
終活アドバイザー・カウンセラーは、終活の専門家であるため、終活の進め方や全体像の把握など、全般の相談が可能です。また、終活への向き合い方や残された人生の過ごし方など、心理的な相談もできます。ただし、弁護士や税理士のように独占業務のある職種ではないため、必要に応じて弁護士や税理士にも相談しましょう。
また「どの専門家に相談すればいいのかわからない」と悩んでしまう人は、まずは「終活セミナー」などに参加してみるのもおすすめです。終活セミナーでは、終活に関する幅広い知識が学べます。「これから終活に取り組もう」とお考えの方は、まずは終活セミナーの活用からトライしてみましょう。
8.まとめ
終活とは「自分の人生の最期に備える準備」のことです。財産の整理や相続の準備に始まり、身の回りの整理やご自身の治療や介護、葬儀についての意思表示を残しておくことも終活に含まれます。
終活では、幅広い情報を記録しておく必要があるため、終活ノートを用意して、書き記しておくようにしましょう。また、財産や相続、税金など、専門知識が必要な項目については、弁護士や税理士、ファイナンシャルプランナーといった専門家に相談するのもおすすめです。
終活は、人生の最後に備える準備ですが「自分の残りの人生を豊かなものにする」「残された家族の負担を軽減し、前向きに生きてもらう」といった役割もあります。ぜひ、ご自身の終活と向き合い、ご家族とともに豊かな人生をお過ごしください。