戒名とは?意味や付け方のルール、お布施の相場についてもしっかり解説
公開日:2024/01/16
更新日:2024/06/04
故人が亡くなられた際に授かる「戒名」。仏式のお葬式では必須といわれる戒名ですが、その意味や成り立ちを理解している人は少ないのではないでしょうか。
そこでこの記事では「戒名とは何か?」を中心に、戒名の歴史的な背景や役割、戒名の基本的な構成について詳しく解説します。戒名をつける際の注意点やルール、お布施の値段相場なども紹介していますので、ぜひ最後までご覧ください。
* 戒名とは何か知りたい人
* 戒名をつける際の注意点やルールを知りたい人
* 戒名をつけるためのお布施の値段相場を知りたい人
* お布施の渡し方や表書きの書き方を知りたい人
戒名とは?
戒名(かいみょう)とは、仏様の世界における故人の「新しい名前」のことであり、現在では、故人が亡くなられた際に授かるのが一般的になっています。
戒名の歴史的な背景
「仏様の世界における故人の新しい名前」とされている戒名ですが、本来は仏門に入った僧侶が、生前に授かるものでした。戒名の「戒」とは、僧侶が守るべき戒律や仏教の教義のことを表しています。こうした戒律や教義を守り修行を行うことを誓うために、仏教では戒名を授ける習慣があったといわれています。
戒名が現在のような形で、一般的に広まっていったのは江戸時代のことです。江戸時代には「寺請制度」という幕府が定めた制度があり、すべての人がいずれかの寺院に所属する「檀家」となることが義務付けられていました。そのため、仏式葬儀が広く定着し、亡くなられた際に戒名が授けられるようになったとされています。
ただし、現在でも生前に戒名をいただくことは可能です。
戒名を授ける目的と役割
仏教では「故人は、あの世で修業を行い仏弟子となることで、仏様に導かれながら迷うことなく極楽浄土に行ける」と考えられています。そのため、仏弟子としての「戒名」が必要になるのです。
葬儀の場では、戒名はお位牌に書かれ、また読経の中でも必ず読み上げられるものです。故人の新しい名前を遺族が唱えることで、故人の冥福を祈ることができ、残された人も気持ちの整理をつけるきっかけとなるでしょう。
戒名をつける際の注意点
故人や遺族にとって重要な意味を持つ戒名ですが、戒名をつける際には以下の点に注意が必要です。
まずは菩提寺に相談する
菩提寺がある場合、戒名は菩提寺の僧侶に授けていただきます。
菩提寺とは、先祖代々のお墓があり、葬儀や法要をお願いしている寺院のことです。菩提寺に相談をせず戒名をつけてしまうと、菩提寺の意向を無視したことになり、トラブルに発展してしまう可能性もあるため、必ず相談しましょう。
戒名には避けるべき文字がある
戒名にはさまざまなルールがありますが、事前に戒名にふさわしくない避けるべき文字があることを理解しておくことが大切です。
①三除の法
戒名では「奇怪な難字」「無詮の空字」「不穏の異字」の3つを除くべきとする決まりがあり、それを「三除の法」といいます。
奇怪な難字 | 読み書きが難しい字 |
---|---|
無詮の空字 | 意味のない字(例:乃、也、於、但 など) |
不穏の異字 | 不吉な意味を持つ字(例:争、恥、敵、悩、死、狂、病 など) |
②二箇の大事
戒名には「歴代天皇の尊号や年号の文字・各宗派の開祖を表す文字」と「動物を表す文字」も使用できません。
歴代天皇の尊号や年号の文字 | 春日宮、崇道、慶光、明治、大正、昭和、平成 など |
---|---|
各宗派の開祖を表す文字 | 日蓮、道元、法然、最澄、空海 など |
動物を表す文字 | 犬、猫、猿、蛇、蛙、馬 など |
ただし、動物を表す文字の中でも、麟、龍、駿、鹿、亀、鳳、鶴など、吉兆を表すものは使用できます。
戒名は自由につけられる?
上述とおり、戒名は菩提寺の僧侶から授かるのが一般的です。菩提寺がない場合は、葬儀社などから紹介された寺院の僧侶がつけることもあります。また、戒名の文字の選び方や構成には意味やルールがあるため、基本的には自由に決められるものではありません。
ただし、戒名に対して故人や遺族の希望がある場合は、まずは菩提寺の僧侶に相談してみるのがいいでしょう。
戒名の基本的な構成
戒名というと「お位牌に書かれている文字すべて」を戒名だと考えている人も少なくありません。しかし、本来の戒名は、その中の2文字のみで、その他の文字にはそれぞれ別の意味があるのです。
戒名は、基本的には次の4つの「号」で構成されています。
* 院号・院殿号:戒名の1番上につく位(ランク)を表す部分
* 道号:故人の人となりを表す部分
* 戒名:故人のあの世での新しい名前を表す部分
* 位号:戒名の1番下につく位(ランク)を表す部分
上記のように、道号と位号の間にある2文字が戒名に該当しますが、現在では、この4つの号を合わせた文字すべてを「戒名」と呼ぶのが一般的になっています。ここからは、4つの号の意味や決め方のルールを、詳しく見ていきましょう。
院号(いんごう)・院殿号(いんでんごう)
院号・院殿号は、戒名の1番上につく「位(ランク)を表す部分」です。もともとは、天皇や身分の高い貴族のみが授かるものであり、現在でも菩提寺に大きな貢献をした方や社会的な功績の高い方などに授けられています。
江戸時代より以前は、院号のほうが院殿号よりも格上でしたが、現在では院殿号のほうがランクが高いとされています。院号は「○○院」、院殿号は「○○院殿」と表記されますが、院号・院殿号をつけないケースも多く見られます。
道号(どうごう)
道号は、もともとは仏門に入った僧侶などに授けられていたものですが、現在では「故人の人となりを表す部分」となっています。ただし、故人が水子や幼児、未成年の場合は、道号はつけません。また、院号・院殿号をつけない場合は、道号が1番上につきます。
道号は、生前の故人にまつわる文字が使われることが多く、例えば出身地の地名から取ったり「海」「山」「峰」など場所を表す文字が用いられたりします。また、故人の人柄や趣味を表す「光」「翁」、徳の高さを表す「岳」「雲」なども使用されます。
戒名(かいみょう)
戒名は「故人のあの世での新しい名前を表す部分」で、2文字で表記されます。
戒名は、1文字を故人の生前の名前(俗名)から取り、もう1文字は経典から取るのが基本です。また、俗名だけではなく、先祖代々受け継いでいる文字や生前の職業にまつわる文字なども用いられます。
位号(いごう)
位号は、戒名の1番下につく「位(ランク)を表す部分」で、現在の敬称(様)にあたるものです。位号は、故人の性別や年齢、社会や寺院への貢献度によってランクが分かれます。
成人の場合
男性の位号 | 女性の位号 |
---|---|
大居士(だいこじ) | 清大姉(せいたいし) |
居士(こじ) | 大姉(たいし) |
大禅定門(だいぜんじょうもん) | 大禅定尼(だいぜんじょうに) |
禅定門(ぜんじょうもん) | 禅定尼(ぜんじょうに) |
清信士(せいしんじ) | 清信女(せいしんにょ) |
信士(しんじ) | 信女(しんにょ) |
成人男性は「信士」、成人女性は「信女」が一般的な位号であり、表の上にいくに従ってランクが高くなります。
子どもの場合
男の子 | 女の子 | |
---|---|---|
胎児 | 水子(すいし) | 水子(すいし) |
4~5歳以下 | 幼児(ようじ) | 幼女(ようにょ) |
嬰児(えいじ) | 嬰女(えいにょ) | |
孩児(がいじ) | 孩女(がいにょ) | |
15歳以下 | 大童子(だいどうし) | 大童女(だいどうにょ) |
禅童子(ぜんどうし) | 禅童女(ぜんどうにょ) | |
童子(どうし) | 童女(どうにょ) |
死産や流産で亡くなられた胎児は、性別にかかわらず「水子」という位号を授かります。また、社会的な功績や寺院への貢献が難しい子どもの場合、ランクは年齢によって決まるのが一般的です。
宗派別 戒名の付け方とルール
戒名は「院号(院殿号)」「道号」「戒名」「位号」の4つの号で構成されるのが基本ですが、実は宗派によっても、それぞれ異なるルールがあります。ここからは、宗派別の戒名のつけ方とルールを解説します。
真言宗
[ 梵字+院号+道号+戒名+位号 ]
真言宗では、4つの号の前に、ご本尊である大日如来を表す「アの梵字」が入ります。これは、故人が大日如来の弟子であることを示しています。また、故人が未成年の場合は、子どもの守り神とされる地蔵菩薩を表す「カの梵字」がつくのが特徴です。
浄土宗
[ 院号+誉号+戒名+位号 ]
浄土宗の戒名は「誉」の文字が入るのが特徴で、道号の代わりに「誉号(よごう)」を使用する場合もあります。本来、誉号は、浄土宗の僧侶に授けられる称号でしたが、現在は僧侶以外の信者の戒名にも用いられています。
また、お位牌に戒名を刻む際は、ご本尊である阿弥陀如来を表す梵字「キリーク」を1番上に入れるのが一般的です。
時宗
[ 院号+阿号+戒名+位号 ]
時宗では、道号の代わりに「阿号(あごう)」が入ります。男性の場合は「阿」の一文字、女性の場合は「弌(いち)」の一文字が用いられます。浄土宗同様に、時宗も阿弥陀如来を表す梵字「キリーク」を一番上に入ることがあります。
天台宗
[ 院号+道号+戒名+位号 ]
天台宗では、阿弥陀如来を表す梵字「キリーク」が一番上に入ることがあります。「院号+道号+戒名+位号」の基本的な形で構成されます。
浄土真宗
[ 釋+法名 ]
浄土真宗には、厳しい戒律がなく「阿弥陀如来を信じること」のみが極楽浄土に行く方法とされています。そのため、戒律に由来する戒名も存在していません。その代わりに、阿弥陀如来を信じる証として授かる「法名(ほうみょう)」があります。
法名は漢字2文字で表記されます。また、法名の前には「釋(しゃく)」という仏弟子であることを表す文字が入るのが特徴です。
日蓮宗
[ 院号+道号+法号(日号)+位号 ]
日蓮宗は、戒名ではなく「法号(ほうごう)」を授けます。日蓮宗では法華経を受持することが、戒律を守ることと等しいとされているため、戒名ではなく法号と呼ばれるようになりました。法号の中には、日蓮上人の法を受けつくという意味を持つ「法(または妙)」の文字が入ります。また、1番上に「妙法」という梵字が入る場合もあります。
曹洞宗・臨済宗
[ 院号+道号+戒名+位号 ]
曹洞宗・臨済宗の戒名の構成は、基本的な4号の組み合わせですが、お葬式の際に使用されるお位牌(白木位牌)に刻む際は1番上に「新帰元(しんきげん)」の文字が入ります。新帰元には「新しく元いた世界に帰る」という意味があります。
著名人の戒名例
戒名の構成や意味を知るために、著名時の戒名例を見ていきましょう。
石原裕次氏:陽光院天真寛裕大居士
院号は「陽光院」、道号は「天真」、戒名は「寛裕」、位号は「大居士」。
昭和の大スターでもある石原裕次郎氏は、周囲を明るく照らすという意味を込めた「陽光院」という院号に、お名前から取った「寛裕」という戒名がついています。
夏目漱石氏:文献院古道漱石居士
院号は「文献院」、道号は「古道」、戒名は「漱石」、位号は「居士」。
夏目漱石氏の戒名には、日本屈指の小説家であることがわかる「文献院」という院号が入っており、また、戒名はペンネームである「漱石」となっています。
美空ひばり氏:茲唱院美空日和清大姉
院号は「茲唱院」、道号は「美空」、戒名は「日和」、位号は「清大姉」。
昭和を代表する歌姫であった美空ひばり氏には、慈しみの心をもって歌うという意味を込めた「茲唱院」という院号に「美空」という彼女の芸名や人柄を表す道号が入っています。
戒名をつけてもらうお布施の値段相場
菩提寺の僧侶などに戒名をつけてもらう際は、お布施を納めます。戒名料といわれることもありますが、戒名はお金で買うものではないため「あくまで戒名を授かることに対するお礼」という意味合いです。
戒名を授かる際のお布施の金額は寺院ごとに異なり、また、戒名のランクや宗派によっても変動します。そのため、一概にはいえませんが、一般的な値段相場は30万円〜50万円前後とされています。
ランクごとのお布施の値段相場
戒名をつけてもらうためのお布施の値段は、位号のランクによって異なるのが一般的で、位号のランクが高くなるほど金額も上がります。また、院号・院殿号がつく場合は、さらにランクが高いとされ、お布施の金額も高くなります。
ランク | 値段相場 |
---|---|
院居士・院大姉 | 100万円~ |
院信士・院信女 | 50万円~100万円 |
居士・大姉 | 50万円~80万円 |
信士・信女 | 20万円~50万円 |
上記の価格は、あくまで一般的な目安となります。詳しいお布施の目安を知りたい場合は、菩提寺に相談することをおすすめします。
戒名を授かるタイミングは?
戒名は故人が亡くなられてからお葬式の前までの短い間に授かります。そのため、あらかじめ戒名授与のタイミングや流れを理解しておくと安心でしょう。
戒名を授かるためには、故人が亡くなられたら速やかに菩提寺に連絡をします。枕経をあげる場合は、その際に僧侶に戒名を授かりたい旨を相談するのもいいでしょう。菩提寺がない場合は、葬儀社に相談し、寺院や僧侶を紹介してもらいます。
故人の生前の人となりや職業、功績など、故人にまつわる事柄を僧侶にお伝えすると、故人にふさわしい戒名を授けてくださいます。戒名が決定すると、お葬式で使用する白木位牌に戒名を刻みます。
生前戒名とは?
現在では、戒名は故人が亡くなられてから授かるのが一般的ですが、生前に授かることも可能です。生前に授かる戒名は「生前戒名」といわれます。
存命のうちから戒名を授かるというと、不謹慎に思う方もいるかもしれませんが、戒名はもともとは仏弟子の証として授かる名前です。そのため、存命中に戒名を授かることは、縁起が良いとされる場合もあります。
生前戒名を希望する際は、あらかじめ菩提寺に相談しておきましょう。
お布施(戒名料)の渡し方
戒名を授かる際は、お礼としてお布施(戒名料)を納めます。戒名料は、不祝儀袋(ぶしゅうぎぶくろ)に入れてお渡しするのがマナーです。戒名料をお渡しするタイミングは、菩提寺や僧侶に戒名の相談をする際が適しています。
不祝儀袋(封筒)の選び方
お布施は、戒名を授かることに対するお礼としてお渡しするものです。そのため、水引のない不祝儀袋を使用します。
伝統的な不祝儀袋としては、奉書紙という和紙を使用するのが伝統的な方法です。奉書紙は、古くから公文書の作成や公的な儀式に用いられてきたものです。奉書紙でお布施をお包みすることで、僧侶へ感謝の気持ちをお伝えできます。
また、奉書紙の用意が難しい場合は、白い封筒を用いる方法もあります。白い封筒を使用する場合は、表に印字がない無地のものを選びましょう。
表書きの書き方
お布施をお包みする不祝儀袋は、表に黒の筆で「お布施(御布施)」の文字と喪主の氏名を記入します。縦書きで上に「お布施(御布施)」、その下に「喪主の氏名」という並びで書きましょう。
お布施の金額は中袋の表に書き、中袋の裏面には喪主の住所と氏名を記入します。中袋がない場合は、不祝儀袋の裏面に、お布施の金額と喪主の住所、氏名を記載しましょう。
お布施を渡す際のマナー
お布施は、不祝儀袋のまま持ち歩くのではなく、袱紗(ふくさ)に入れて持参します。僧侶にお布施を渡す際は、最初にご挨拶を述べてお礼の気持ちを伝えましょう。お布施は僧侶の前で袱紗から取り出し、切手盆または黒塗りのお盆に乗せて渡します。
戒名の活用例
戒名には「故人のあの世での新しい名前」という意味があり、お葬式の読経で読み上げられます。また、お葬式の際に使用する白木位牌と、四十九日以後に自宅のお仏壇に祀られる本位牌に刻まれます。
そのほかにも、先祖代々の故人の戒名と俗名、没年月日、没年例などが記された「過去帳」に追記されることもあります。また、お墓に戒名を彫り込む場合は、墓誌や竿石に刻みます。
このように戒名は、故人が亡くなられたあとも、供養のために長く用いられるものです。
戒名が不要な事例
仏式のお葬式をあげる際は、基本的には戒名が必要になります。ただし、以下のようなケースでは、戒名が不要な場合もあります。
* 樹木葬や海洋葬といった自然葬の場合
* 宗教的な儀式を行わない自由葬の場合
ただし、樹木葬や自由葬でも寺院に埋葬するケースでは、戒名が必要になることもあるため、戒名の有無については、依頼する葬儀社に相談して決めることをおすすめします。
戒名をつけないデメリットは?
葬儀の種類や供養の方法によっては、戒名をつけないケースもあります。しかし、戒名は故人の冥福を祈る意味合いもあるため、戒名がないことで親族間でトラブルに発展するリスクも考えられるでしょう。
また、戒名は仏弟子であることの証でもあり、戒名がないと四十九日や法事といった法要が執り行えない可能性もあります。さらに、菩提寺に相談をせずに戒名を不要としてしまった場合は、お寺に納骨できないケースもあります。
そのため、戒名をつけるかどうかは慎重に判断し、菩提寺には必ず相談しましょう。
【まとめ】戒名は意味やルールを理解することが重要
戒名には「故人のあの世での新しい名前」「故人が仏弟子である証」という意味があり、故人を迷いなく極楽浄土に導いてくれる役割があります。
戒名は菩提寺や寺院の僧侶から授かるのが一般的ですが、いただく戒名の意味を理解するためにも、その構成や成り立ちを知っておくことが大切です。また、戒名を授かる際はお礼としてお布施を納めます。お布施の金額相場を把握して、スムーズに戒名授与ができるように準備しておきましょう。
戒名についてお悩みの場合は、まずは葬儀社に相談してみるのもおすすめです。メモリアルアートの大野屋では、お葬式の無料相談やお墓、仏壇のご提案を行っております。
お葬式の形は十人十色、お客さまだけの葬儀プランをご提案します。ぜひお気軽にご相談ください。